オーストリア・カップ
オーストリア・カップ(ÖFB-Cup)はオーストリアで行われるサッカーのカップ戦であり、1919年より開催されているヨーロッパで最も古いカップ戦の一つ。
このカップ戦の本大会には合計52チームが参加する。オーストリア・ブンデスリーガ及びレッドツァック・1部リーグ(オーストリア2部)に所属するチームは予選無しで参加できるが、レギオナルリーガ(オーストリア3部)や各州の下位リーグ(4部から9部)のチームは、本大会の予選を兼ねている各州のカップ戦に参加し、州のカップ戦の結果によってオーストリア・カップへの出場権を得ることができる。
ホーム・アンド・アウェー方式ではなく全ての試合は一発勝負のトーナメント式で行われ、アマチュアチームとプロチームの対戦の場合、必ずアマチュアチームのホームで試合が行われるため、波乱も起きやすく、『ジャイアント・キリング』も見所の一つとなっている。引き分けの場合は延長戦、それでも勝者が決定しない場合はPK戦が行われる。
現在、オーストリア・カップで優勝したチームには、翌シーズンのUEFAカップ出場権が与えられることとなっている。ちなみに1927年から1937年まではUEFAチャンピオンズリーグの前身と言われている「ミトローパ・カップ」への出場権、1960年から1997年まではUEFAカップウィナーズカップへの出場権が優勝チームに与えられていた。
オーストリア・カップの前身は、ハプスブルク帝国時代の1897年から行われていた「チャレンジ・カップ」(当時のハプスブルク帝国に属していたハンガリーやチェコのチームも参加)、及び1915年からニーダーエステライヒ州で行われていた「ニーダーエステライヒ州カップ」である。
第2次世界大戦前はオーストリアがナチス・ドイツに併合されていたため、1939年から1945年までオーストリア・カップは実施されず、オーストリアのチームはドイツ・カップ(DFB-Pokal;1944年と1945年は実施されなかった)への参加を強要された。そして地理的な要素など多くの不利な条件があったのにも関わらず、2度の優勝を果たし、当時のオーストリア・サッカーのレベルの高さを証明している。
第2次世界大戦終結後、1946年に再びオーストリア・カップは復活した。その長い歴史の中で、これまでFKアウストリア・ウィーン、SKラピード・ウィーン、FCヴァッカー・インスブルックが最も多くの優勝及び準優勝を果たしている。
現在はオーストリアを代表するビール会社「シュティーグル」(Stiegl)がメインスポンサーになっているため、別名「オーストリア・シュティーグル・カップ」とも呼ばれているが、一昔前まではオーストリアの煙草企業の「メンフィス」がメインスポンサーだったため、「オーストリア・メンフィス・カップ」という別称であった。メインスポンサーの変更によってカップ戦の名称も変更されるのはサポーター間では全く歓迎されておらず、スポンサー名はほぼ無視され、あくまで「オーストリア・カップ」(ÖFB-Cup)と呼ばれている。
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